2016年8月22日月曜日

訓示/動乱のエピソード編その2



訓示
~世界に誇る日本の頷き王語る!~



仕事柄訓示というのを何度もした。人前で話すのは難しい。特に演台などに立ち、所謂「高い席」から話していると、相手がよく見えるものである。頬杖をついてるヤツがいると、何故かムカつく。欧米では足を組むのはセーフである。よくオバマ大統領が足を組んで首脳会談などをしている写真を目にする。しかし、日本のビジネス界の社内会議等ではアウトだろう。腕を組むのもアウト、という説まであるのだ。理由は、腕を組むのは対立的な心理の顕れだから、だそうである。こうなると、聴いている方の姿勢はかなり制約される。メモを取るか、膝の上に両手を置くしかないのである。これは日本人的なのかもしれない。目上の者の話は姿勢を正して聴くという、礼節的なことなのであろう。

昔若い頃にうるさい上司に、会議中に「なんで腕なんか組んでるんだ!」と怒鳴られたことがある。その時は、うるせえなぁ、何言ってんだよ、と思ったが、演台で腕を組んでるヤツを見つけると確かに感じが悪いのである。おー、何と人は立場で変わるのか(^^;)

感じが良いのは頷く人である。話のポイントポイントで頷いてもらうと、何か応援してもらっているようで自信が湧いてくる。同意し、理解いただいている手応えを感じ嬉しくなる。やっぱ俺が言ってるのは正しいんだな、と思うのだ。

かつて部下だったK君は絶妙に頷く。強弱をつけ、小刻みに何度も頷いたり大きくゆっくり頷いたりする。タイミングも素晴らしい。つまり、私がここで頷いて欲しい、と思う所で、的確にかつ抑揚をつけて最高の頷きを見せるのである。K君がいると本当に話しやすく、満足を得られる話ができるのであった。
ところがである。K君は私の話を一向に実践しようとしないのだ。あんなに同意してくれた一番の理解者であるはずのK君が、何故私が話したことを実践してくれないのか。私はK君を呼んで訊いてみたのである。K君は最初何を言われているのか分からず、はぁ?!何でしたっけ?みたいな感じであった。
「ほら、こなんだの会議の時に私がこうしよう、と言ったら、K君は大きく頷いてくれてたじゃない」と言うと、しばしの沈黙の後に彼はこう言ったのである。
「あー、あれですか。あれはただの癖です」
 く、く、癖ぇぇぇぇぇ?!まさに衝撃の告白であった。確かに頷くのがただの癖であれば、実践するはずもないのである。
 K君曰く、自分は人の話を聴いていると何となく相手の目を見ながら頷くようになって、そしてそれが癖になってしまったのだが、続けているうちにどんなタイミングでどのように頷くと話している人が気持ち良く話せるかが理解出来て来て、どんどん頷きのレベルが上がって、今や自分でもものすごく高度な領域まで到達しているのが分かる、とのことであった。だから、基本的に人の話はあまり聞いていないのだそうだ。 
 愕然とした。訓示や会議でのスピーチは当然行動の変革を求めていることが多い。私が気持ち良く話すために会議を開催している訳ではないのである。しかし、K君はスピーカーに気持ち良く話させるためだけに会議に出席しているのだ。そして「世界に誇る日本の頷き王」的に頷きまくり、頷き界最高峰に君臨していると思われる程に頷きの技術を極めているのである。

屈託のないK君はにっこり笑い「だけど福田さん、気持ち良く話せたでしょ」と言った。私は深いため息とともに力なく頷くしかなかった。
そして驚くべきことにその後のサラリーマン人生の中で3人の人が、ただの癖です、と答えたのである。3人ともかなり高いレベルで頷いていたため、まさかと思いながらも念のために確認した結果であった。

以来、私は上手く頷く人はあまり信用していない。美貌のホステスに裏切られた心境にやや近いのかもしれないな。



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