「ハドソン川の奇跡」ネタバレなしの映画レビュー!/超おススメDVD/サラリーマン映画ガイド



~この映画は外せない!真実の物語が胸に迫る!~




 200911515:30頃、ニューヨーク発シャーロット経由シアトル行のUSエアウェイズ1549便は、ガンの群れに遭遇、両エンジンにバードストライクという極めて稀な事故により両エンジンが同時停止した。
 チェスリー・“サリー”・サレンバーガー機長(サリー機長)はとっさの判断で、機をハドソン川に緊急着水させる決断をする。管制塔からは近隣空港への着陸を指示されていたが、それを無視しての決断だった。そして真冬の寒さの中、副操縦士やスタッフと協力し、乗客全員を避難させ、総員155名は全員無事に救助されたのだった。
 人はこの事件を「ハドソン川の奇跡」と呼んだ・・・。

  この実在する事件をベースとして制作されたのが、本編「ハドソン川の奇跡(原題:SULLY)」である。原題は機長のニックネームに由来している。

 監督は、今や名監督として名高いクリント・イーストウッド。主演はトム・ハンクスである。


 評判も素晴らしいのでDVDをレンタルして拝見した。

 作品は事件をほぼ忠実に再現している。まるでノンフィクションか再現フィルムを観ているように感じる。リアリティに満ちているのだ。それだけに強く感情移入してしまう。

 トム・ハンクスはさすがに名優だ。主人公の人となりを見事に演じ切っているのと同時に、心の葛藤や迷いもその表情で余すところなく伝えている。
 仕事を愛し、家族や友人を大切にする、正にアメリカ人の良心と言える人柄を演じ切っているのである。


 事実と本編の違いは、主人公の判断が正しかったのかどうかを強く糾弾されるシーンである。
 実際の検証の中でも片方のエンジンは完全停止しておらず、近隣空港への着陸は可能だったというシュミレーションが明らかになっており、本編ではそこに焦点を当てフィクションとして展開させている。

 ヒーローが、本当はミスにより乗客を死の危険に晒した悪人だったのではないか、ということである。



 本編ではNTSB(National Transportation Safety Board:国家運輸安全委員会)が、サリー機長の判断を誤りと決めつけ、それを正当化していく様が描かれているが、観ているとどちらの主張が正しいのかわからなくなってしまう自分に気づく。そして、あたかも自分自身が当機の乗客であったかのような感情に囚われ、真相の解明を欲してしまうのである。
 これは正にクリント・イーストウッド監督の術中に嵌っているのであろう。

 私も公聴会のシーンでは、ハラハラドキドキしつつも息を飲み見守るしかなかったのである。
 本編はある意味淡々と進む。そこには予想を超えるスペクタクルも真実を歪める誇張もない。しかしそれが却って作品の重みにつながっている。

 本編のラストシーンに続くエンドロールは必見である(絶対観てね(^-^;)。
 観客はもう一度本編の本当に意味を再認識するからである。

 様々な文献からも、この飛行機事故の結末が「奇跡」であったことが明らかになっている。
 しかし、それを生んだのはサリー機長、副操縦士の判断と、クルーと乗客の冷静な行動そのものなのだ。正に人間が意図的に起こした奇跡なのである。



 このように素晴らしい人間ドラマを追体験できるのは、映画の最大の魅力とも言えるのだと思う。

 機内の155人は、この奇跡の着水がなければ、全員が亡くなっていた可能性の方が遥かに高いのである。
 エンドロールを観ながら、「生きる」ということに思いを馳せれば、何だか力が湧いてくるような気がするのだ。
 マジ必見ですよー(^^)/