2016年11月17日木曜日

「ダック・コール/稲見一良」ネタバレなしのブックレビュー!/エンタメの王道

 

最近「書店推し」というスタイルが流行っているようだ。本屋大賞など、書店員が推薦する本が人気を博している。書店員は本が好きで精通しているから、読んで間違いない、というような感じだろうか。
 書店で独自のPOPを立てたりするようになったのもそんなに昔の話ではない。
 本好きの書店員が始めたこの企みは、今や本屋大賞のような大きな花を咲かせているのである。文化を創ったということだな(^-^)

 さて、私が行く本屋さんで独自の「PUSH!1stLIBRARY」という企画をやっていて、平積みにしているコーナーがあった。そこで見かけたのが本書であった。
 私は日本のミステリーのマニアである。最も好きなのは樋口有介だが、矢作俊彦、伊坂幸太郎、道尾秀介、大沢在昌、佐々木譲、誉田哲也、月村了衛、香納諒一、真保裕一、黒川博行、奥田英朗などの作品をよく読む。
 先日芥川賞を受賞した荻原浩も全作品読んでいるが、元はと言えばミステリーの出身の作家である。
 最も好きなジャンルはハードボイルドだ。不撓不屈の魂を持つ探偵が、ピンチにもシニカルな軽口を叩いたりするところに、正に男のロマンと感じるのである。

 本作の作家である稲見一良(いなみいつら)はテレビCF、記録映画などのプロデューサーを経て58歳で作家デビューしている。そして63歳の若さで没しており、遺した作品はわずか8作だ。

 その中でも本作は第四回山本周五郎賞を受賞しており、類稀なる美しさと無駄がなく流麗で、また抒情に溢れた文章は圧倒的である。「息をのむ美しさ」と評されているが、読むとその世界の深遠さと作者の崇高な魂に心を奪われること必定だ。
 本作は作者曰く、レイブラッドベリの「刺青の男」にヒントを得た短編集だそうであるが、まったく違う6つの話で構成されている。カメラマン、ハンター、密漁者、犯罪者を追う元ソルジャー、漁師、少年。それぞれの物語を彩るのは鳥である。
 人も鳥も実に生き生きと描かれており、美しくも厳しい自然の中で生を育む姿が胸を打つのである。
 しかしこんなに情景が鮮明に浮かぶ文章は初めてかも知れない。

 作者は肝臓がんで10年闘病しており、作家としてデビューしたのは最初の手術の後である。それだけに、その作品の陰に見えるのはひたむきで透明な愛だ。人間や動物や自然に対する愛惜の念が、このように美しくも切ない物語を紡がせるのだろう。

 この本は一人旅に持参するのが最良であろう。勿論電車の旅である。季節は晩秋か初冬がいい。
 車窓に流れる景色に時折目を遣りながら、本書を読むのである。

 巡り合えて良かったと心から思える本は多くはない。
 本作には作者が込めた生きることへの想いが満ちている。絶対のおすすめ作品だ。


ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)
稲見 一良
早川書房
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