2016年10月28日金曜日

日本語は難しい/咆哮のオピニオン編その7

<作画:みやかね・にわとり>

日本語は難しい
~たった一言でサラリーマン人生の危機?!~


 日本語は世界一難しいという意見がある。単語を覚えて喋る分にはさほどではないのだろうが、読み書きするとなると大変だ。漢字に平仮名に片仮名、音読み、訓読みなど非常に多岐に亘るし、微妙な言い回しも多い。外国人の方が日本に来て当惑するのが敬語や謙譲語であるという。そのような表現方法が無い言語の方が多いのだろう。

「かしこまりました」「恐れ入ります」「何卒よろしくお願い申し上げます」「お疲れ様でございます」「ご苦労様です」などはニュアンスを正確に翻訳することすら難しいのかもしれない。

 サラリーマンの世界にはかつて「ご苦労様事件」というのがあった。上司に会った時に「ご苦労様です」と言ってしまいその上司の逆鱗に触れ、サラリーマン人生が終わってしまった人がいたという何とも恐ろしいエピソードである。勿論最近はそのようなことはないのだと思うが、私が入社した昭和の時代には都市伝説のように広まっていた話なのである。

 だいたいこういう話には物凄く偉い人が登場する。例えば社長とか会長とか。もう一人の登場人物は課長クラスかもっと下かくらいである。概要はこんな感じだ。

 社長が地方に出張した際、地元の課長クラスが駅まで出迎える。粗相があってはいけないので、課長は30分以上前から駅のホームで待機し、今か今かと待ち構える。列車がホームに滑り込み、ドアが開いて社長が降りてくる。社長は勿論雲の上の存在で一度も会ったことはないが、写真で見ているから顔だけは分かる。慌てて小走りに駆け寄りると社長が気付いてニコっと笑ってくれた。
 おー!俺に笑いかけてくれたぁぁぁ!天にも昇るような気持ちで満面の笑顔を作り社長にこう言う。
「社長!ご苦労様です!〇〇支店営業課長の福田です!」
 すると社長の笑顔が鬼の形相に変わり、福田課長は急に怒鳴られるのであった。
「何がご苦労様だ!あたしゃ車屋さんかぁぁぁぁ!」
 ガガガガ、ガーン!社長に怒鳴られた・・・。ショックで立ち直れない。俺のサラリーマン人生・・・終わった・・・。しかし・・・車屋さんて・・・一体・・・何?・・・。

 このような話である。
 車屋さんというのは人力車の車夫のことであろう。昔のお客と車夫との例えで、「ご苦労様」は上から使うものだ、という意味だと思う。正しいのは「お疲れ様」である。「お疲れ様」はオールマイティで目下からも、目上からも使って良いと教わった。若い頃にこの話を聞いてからというもの、私は一度たりとも誰に対しても「ご苦労様」という言葉は使っていない。

 ところがである。かなり役職が上がってから、上司と地方に出張した時のことだ。社内の出先に行った際に社員が出迎えてくれたので「お疲れ様」と声を掛けた。すると上司の表情が険しくなり、小声で叱責されたのである。
「お前なぁ、『お疲れ様』は目下が使う言葉だ。そんなことも知らないのか!」
 そんなことは知っている。知っているが若い頃に「お疲れ様」はオールマイティと教わった。オールマイティというのはどちらでもいいということだ。どちらでもいいと思ったからお疲れ様と言っただけである。私はバカではない。そんなことは承知の上だ。文句があるなら教えた人に言ってくれ・・・。
 そう思ったのだがそんなことを上司に言えるはずがない(=_=)
 私は「は!失礼しました。以後気をつけます!」と、極めてサラリーマン的な対応として45度頭を下げたのであった。

 勿論そこはそれだけの話で済んで、サラリーマン人生の危機に陥った訳ではないのだが、何と日本語というのは難しいものであろうかと思った。特にこのように、正解があるような無いようなケースでは、その人の感性に左右されてしまうから尚更始末が悪いのである。
 しかしネットで調べると、何と「お疲れ様も上司に使うのは避けた方が無難」などという記事があり愕然とする。じゃあ上司に会ったら何と言えばいいのか。「おはようございます。こんにちは。さようなら」だそうである。
 ふざけるなぁ!上司に会って「こんにちは」なんて言えるかぁ!はぁはぁはぁ・・・。憤りで息が荒くなる"(-""-)"
 まぁいい。いろんな意見があるにせよ、私は圧倒的に「お疲れ様」を支持する。
 しかしまぁ、これが日本語の難しさなんだよなぁ・・・。

 また、逆の意味と勘違いしている言葉もある。
 例えば「役不足」。何度も使っている言葉だが、私もかつては完全に間違えていた。「いやー、それは私では役不足で荷が重いです」などと使っていたのだが、全く逆であった。これは歌舞伎から来ている言葉で、「力量に比べて役目が不相応に軽いこと」を表すらしい。だから、「いやー、そんな簡単な仕事じゃ私には役不足ですね。誰か他の人にやってもらってください。もっと重い仕事をくださいよ。私ほどの優秀な人間には・・・」というように使うのが正しいようである。しかし何と生意気で不遜なヤツなのか。こんなヤツがいたら本当にムカつくだろうな。

「情けは人の為ならず」というのもある。これは社会人になってから正しい意味を知った。言葉だけを聞くと明らかに「情けをかけるのはその人の為にならない。厳しく接しなければ人間の成長はない」みたいに聞こえる。しかし正しくは「情けは人の為にかけるのではなく自分の為に、なのだ。誰にでも親切にしておけば結局は自分に返って来る」という意味だそうだ。言外に本当の意味があるのだ。

 いやはや難しい。日本語は本当に難しい(*_*;

 例えば、「分かりました」という言葉を別な表現にすると、「了解しました」「承知しました」「かしこまりました」などがある。しかし「了解しました」は失礼にあたるので目上の人には使わない、という意見がある。それなら「了解でございます」ならどうか。「了解いたしましたでございます」ならどうなのか。何となく失礼でもないような気もするなぁ。

 あー、難しい!もうやだ!誰が決めたんだ!ややこしいぞ!責任者出て来―い!


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