「イノセントデイズ/早見和真」ネタバレなしのブックレビュー!/サラリーマンブックガイド


「静かで壮絶な熱!」かつてこんなに切なく息苦しくなるような作品があったか・・・(;O;)



 2015年の日本推理作家協会賞受賞作、早見和真さんの「イノセントデイズ」のネタバレなしのブックレビュー!です(^.^)





(^.^)本日の記事の目次


👉何故この作品を手に取ったのか?


👉日本推理作家協会賞って何?


👉もう一つの理由は「帯」です。


👉あらすじはこんな感じ。


👉「イノセントデイズ/早見和真」の評価は?!読むべき作品か?





👉何故この作品を手に取ったのか?


 作者の早見和真さんは残念ながら存じ上げなかった。

 私は基本ミステリーを読むことが多いので、同氏の過去作品は私のミステリーアンテナには引っかからなかったのである。

 早見氏は1977年生まれだ。
 横浜の桐蔭学園高等学校野球部の出身であり、国学院大学在学中には既にAERAやSPA!などでライターとして活動していたらしい。

 新聞社への就職が内定していたが、大学を退学したために取り消しとなり自暴自棄に陥る。
 そんな時に旧知の編集者の勧めで書いた「ひゃくはち」で小説デビューを果たすという人生の逆転劇を演じている。
 更に同作品は映画化、漫画化も果たし、作者の現在の地位を作るきっかけとなったようである。

 経歴だけを見てもなかなか魅力的な人物に映るのである(^.^)

 本作品は「日本推理作家協会賞」というのを受賞している。

 実はこの賞は、「これを獲った」というだけでハズレはないとほぼ断言できるという最高のミステリーの保証書である!





👉日本推理作家協会賞って何?


 そもそも日本推理作家協会は、1947年に江戸川乱歩が設立した日本探偵作家協会を起源として続いている日本の推理作家の協会である。

 そして本賞は1948年横溝正史の「本陣殺人事件」を第1回の受賞作として、2017年には第70回の受賞作が決定したという、正に日本の推理小説の歴史と伝統を担う誠に素晴らしい賞なのだ。

ここ10年の長編受賞作を記してみる。

第70回(2017年)宇佐美まこと「愚者の毒」

第69回(2016年)柚月裕子「孤狼の血」

第68回(2015年)月村良衛「土漠の花」、早見和真「イノセントデイズ」

第67回(2014年)恒川光太郎「金色機械」

第66回(2013年)山田宗樹「百年法」

第65回(2012年)高野和明「ジェノサイド」

第64回(2011年)摩耶雄嵩「隻眼の少女」、米澤穂信「折れた竜骨」

第63回(2010年)飴村行「粘膜蜥蜴」、貫井徳郎「乱反射」

第62回(2009年)道尾秀介「カラスの親指」、柳広司「ジョーカー・ゲーム」

第61回(2008年)今野敏「果断 隠蔽捜査2」

 大半は読ませていただいているが、作風の好き嫌いはあるものの、本当にハズレは少ないのである。






👉もう一つの理由は「帯」です。


「読後、あまりの衝撃で3日ほど寝込みました・・・」と書いてある。

 大げさである。

 本を読んだくらいで3日も寝込んでいたら、大変なことになる。

 仕事にならんではないか"(-""-)"

 こんなことを帯に書いていいんかい( `ー´)ノまったく乱暴な編集者だなぁ・・・と思っていたら・・・。


まさかの辻村深月さんのコメントであったΣ(゚Д゚)!

 辻村さんは私もファンだが、直木賞も受賞したミステリー界の大御所である。

いい加減なコメントを書くような人ではないのだ💦

 ならば本当に3日間寝込むことも想定しつつ読む必要があるな、と私はiPhoneのスケジューラーを確認しながらレジに本書を持参したのであった(^-^;





👉あらすじはこんな感じ。


※↑本書裏表紙より


 マスコミに「整形シンデレラ」と呼ばれた死刑確定囚田中幸乃。
 彼女は、元恋人の妻と双子の1歳の娘たちを放火により殺害した罪で刑の執行を待っていた。

 しかし何故あの日彼女は放火するに至ったのか?
 過去に彼女と関わりのあった様々な人々が語る真実、そして最後の最後まで無罪を信じて必死に動き回る友人たち。

 本当に犯人は彼女なのか?

 様々な過去の記憶がつながり、彼女の人生が浮き彫りになる中で、物語は静かで、しかし壮絶なエンディングへと雪崩れ込んで行く・・・。





👉「イノセントデイズ/早見和真」の評価は?!読むべき作品か?

 是非おススメしたい作品だ。

 私はこれほど静かに胸が締め付けられるような作品は、かつて読んだことが無い。

 切なく息苦しくなるようなラストを読み終え、私はしばし呆然と天を仰いだのである。

 最後は祈るような気持ちだった。心の中で手を合わせていた。

 しかしこの作品の最も大きな特徴は静けさである。



 手に汗握るミステリーは数多くある。
 ハラハラドキドキ、二転三転、ラストの強烈などんでん返しにえええええ?!となるような作品は多いものだ。

 しかし本作は違う。じりじりとした焦燥感や哀感を覚えつつ、物語は淡々と進むのだ。

 それでもどんどん引き寄せられ、ストーリーに没入してしまうのは、作者の力量の凄まじさを表している。

 まず文章が実に上手い。すらすら読めるのに格調がある。
 プロットはなかなか複雑である。
 登場人物も多く、絡み合いながら進む。
 そしてそれらが、後半からエンディングにかけて徐々につながって行くのである。

 本書の特徴の一つは、トーンが最後まで変わらないことである。

 過度な盛り上がりもなければダレる場面もない。
 すべてが淡々と進むのに、それでも次を読みたい読みたい!と強く思ってしまう私の心の動きは、なかなか経験の出来ないことだった。

 そして、主人公田中幸乃への想いが、胸の中でぼーっと静かに燃えるのだ。


 私がもしこのストーリーの中に存在していたら、何が出来たろう?彼女の為に何かしてあげれたろうか?と自分に問いかけてしまうのである。

 そして読後にもう一度、辻村深月氏の「静かで壮絶な熱」というコメントが、深く深く胸に迫るのだ。

イノセント・デイズ (新潮文庫)
早見 和真
新潮社 (2017-03-01)
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