64(ロクヨン)/横山秀夫:ネタバレなしのブックレビュー!/サラリーマンブックガイド


~いやはや驚いた(◎_◎;)正に日本ミステリー界の金字塔!~

  本当にすごい作品である。驚いた(◎_◎;)
 めったに驚かない私が心底感銘を受けた大作ミステリーである。
 通勤時は乗り越し注意だ(^^;(特に終盤)。

 警察小説の旗手横山秀夫氏の作品である。
 氏の作品はすべて読んでいる。寡作の部類に入る作家さんだろう。

 1957年生まれ。1991年に「ルパンの消息」がサントリーミステリー大賞佳作に入選しデビューする。

 「動機」「半落ち」「深追い」「第三の時効」などの警察小説の他、日航機墜落をテーマとした「クライマーズ・ハイ」や戦争小説「出口のない海」も名作として名高い。

 すべてにおいて手抜きのない、取材のしっかりとした作品を創出している。


 自身が上毛新聞の記者だった経験を活かし、警察と事件記者というテーマで執筆されている本作は、誰にも書けないような緊迫したリアリティが胸に迫る
 こんなディテールは本当に横山氏以外には想像することすらできないだろう。

 本作は2013年の作品だが、「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、本屋大賞2位など様々ランキングで圧倒的な評価を受けている。

 日本を代表する警察小説と言えよう

本作のあらすじは以下。

 7日間しかなかった昭和64年に、D県警管内で発生した幼女誘拐事件通称「ロクヨン」。14年が経過し時効をあと1年に控えた頃、当時捜査一課で事件を捜査していた三上は、今は警務部広報官としてマスコミ対応をしていた。
 日常の事件の匿名発表を巡って新聞記者たちと対立する最中、警視庁長官が「ロクヨン」の被害者宅を訪問するという話が持ち上がる。そこには刑事部、D県警、本庁の様々な思惑が絡む人事問題が内在されていた。
 三上は高校生の娘が失踪しており、元婦警の妻ともども傷心の日々を送る中、ロクヨンの被害者の父雨宮に長官の訪問を申し出るが面会を拒絶される。その後雨宮は三上の熱意に負け承諾に転じるが、長官来訪の前日、なんと「ロクヨン」を模した女子高校生の誘拐事件が発生した。しかし、そこには予想もできない結末が待っていた・・・。

 うーむ、ネタバレせずに書くのは何と難しいことか(-_-;)

 D県警シリーズ4作目にして初の長編である。
 本作は最初に別冊文藝春秋で連載としてスタートしたが、思うように筆が進まず途中でやめてしまったそうである。
 再び書き始めるも、途中で作者が記憶障害の症状に悩まされるようになり、ほとんど書けない日々が続いたという。
 そんな様々な困難を乗り越えて日の目を見た作品という背景も含め本作を読むと、更に非常に深い感慨を覚えるのである。
 ああ、この作品に出合えてよかった!
 完成してくれて本当にありがとう!!
 本作は登場人物のキャラが秀逸である。
 無骨な信念の人、主人公三上、美貌の妻、警務部広報室のメンバーである諏訪、蔵前、美雲。ロクヨンの事件で幼き娘を惨殺された雨宮、当時担当刑事で現在捜査一課長の松岡、さらに、官僚的上司の赤間や警務部調査官の二渡、各社の新聞記者たちなど、様々な人物がその個性を十分の発揮している圧倒的人間ドラマである。


 普通はこんなに登場人物が多いと混乱するものだ((+_+))
 しかし本作では多様な人物が、スムーズにイメージを結ぶのである。
 これは作品のリアリティを極限まで高めた、類まれなる作者の力量とストーリー構成の緻密さによるところであろう。

 文庫は上下巻の長編である。
 映画にもなったが、これも前編、後編に分かれていた。
 映画の前にはNHKにドラマで放送されていたそうだ。
 ドラマの主演はピエール瀧、映画は佐藤浩市である。
 うーむ、映像でも観たくなりますなぁ(^.^)


 本作のエンディングは驚愕に目を見開き、そして切なさに胸がつぶれる。
 こんな作品に出合えたことには、本当に感謝するほかない。
 作者の命を削るような努力と、心に秘めた矜持があればこその作品であろう。
絶対的におススメします<m(__)m>



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